日報文化×Agentforce。ジャロックが「溜まるだけのデータ」を「使えるナレッジ」に変えるまで

お話を伺った方
株式会社ジャロック
ロジスティックス営業本部 営業戦略部
サブリーダー 宮田 英明さん/ゾ スミスさん

 

創業から63年、物流の現場を支えてきたジャロック。社員約40名の同社は、2023年にSalesforceを導入し、営業活動の情報を一か所に集める仕組みを整えてきました。ただ、情報は溜まっても、それを活用できていないという壁が残っていました。そこで同社が選んだのがAgentforceです。商談の自動議事録化や社内ナレッジの検索などを通じて、データを「使えるナレッジ」に変えつつあります。導入窓口を務めた営業戦略部の宮田英明さんと、ゾ スミスさんにお話を伺いました。

 

課題:ベテランの頭の中にしかなかった情報

「過去の案件は、この人に聞かないとわからない。そんな状態がずっと続いていました」と宮田さんは振り返ります。

長年にわたって営業を率いてきた部長職の社員が退職したことで、属人化した情報は会社の課題としてはっきり表に出ました。資料はフォルダ、スプレッドシート、メールなどに散らばっていて、過去の案件を調べるにはまず「誰が担当していたか」から探す必要があります。

「15分で見つかればいいほうで、早く見つかればラッキーくらいでした。担当者が外出していたらわかりませんし、1週間不在なら探せないこともありました」(宮田さん)

2023年に導入したSalesforceの狙いは、この情報を一元化して全社で共有することでした。プロジェクトの初期に斉藤社長が語っていたのは、「社長の頭の中身をSalesforceに入れて、みんなが斉藤社長になれるようにしたい」という言葉です。

ところが、運用を始めると新しい課題が見えてきました。入力の量や粒度が人によってばらばらで、たくさん書く人もいれば一言で終わる人もいたのです。「情報は溜まったけれど、どう使うのか」という状態でした。

 

選定:迷わずAgentforceへ。土台にあった「日報文化」

AIの活用を考えたとき、同社はほかのツールと比べることなくAgentforceを選びました。

「『何でも全部Salesforceに入れてください』と社内でずっと言われ続けていたので、溜めた情報を一番活用できるのはAgentforceだろうと。迷いはありませんでした」(宮田さん)

この判断の背景には、時間をかけて育ててきた文化があります。2018年ごろにSalesforceの提案を受けたとき、斉藤社長は他社が情報の蓄積に苦労している様子を見て、「今じゃない」と導入を見送りました。まず別の日報アプリを入れて、日報を毎日入力する習慣を全社に根づかせることから始めたのです。

「日報の役割をSalesforceに移す形になったので、抵抗なくスムーズに移行できました」(宮田さん)

2年目のスミスさんも、入社した時点で「Salesforceへの日報入力は当たり前で、毎日営業と営業戦略部が見ている状態でした」と話します。データを入れる文化が先にあったことが、AI活用の土台になりました。

 

構築:3つのエージェントと、「間違える前提」の設計

導入を進めるにあたって、宮田さんたちは営業への社内アンケートや個別のヒアリングを重ね、「営業が本当に必要とする機能は何か」を聞いて回りました。そのうえで構築したエージェントは次の3つです。

  1. 類似商談・提案書の検索エージェント:過去の似た案件や提案書をすぐに探し出す
  2. 営業向けの情報検索エージェント:製品情報などを営業が自分で調べられる
  3. 社外向けのWebチャットエージェント:ホームページを訪れたお客様が、チャットで情報を得られる

業務でAIを使ううえで最も気になるのが、回答の正確さです。当社エンジニアの藤田(取締役CTO)は、「AIは間違えるもの」という前提で設計したと説明します。

「エージェントごとに見てよい情報を明確に絞りました。カタログやFAQは、社内限定のものと社外に出してよいものをジャロック様に区別していただき、フラグを付けています。価格のような情報は社外には出さず、問い合わせフォームに誘導します。型番や寸法のような細かい情報は、カタログ単位で検索させて正確さを保つようにしました」(藤田)

正しい答えを知っているのは現場だけです。構築中は回答を一つずつ営業に確認し、今も2週間に1回の定例で、営業担当も交えて回答の良し悪しを確かめて反映するサイクルを続けています。

「僕たちもわかる範囲で確認しますが、現場を知っている営業でないとわからないことも多い。営業に確認を取りながら進めました」(スミスさん)

導入当初は「思っていたのと違う」という声もありました。それでも「AIを育てる」という社長の方針のもと、試行錯誤を重ねて定着させていきました。

 

効果:議事録の自動化で変わった営業の現場

最も大きな変化は「情報の入れ方」です。商談を録音して自動で議事録にし、Salesforceに入力する仕組みを導入しました。

「以前は営業が現場でメモしたことを転記していたので、記憶頼りで漏れもありました。今はきちんとした情報が同じフォーマットで入るので、欲しい情報が均一に吸い上げられるようになりました」(宮田さん)

営業にとっては入力作業がなくなり、その分を営業活動に回せるようになりました。案件の多い営業ほど、この効果は大きくなります。さらに、商談のスコアリングによって今の状況が見える化され、AIが「次回アクション」まで入力してくれるようになりました。

インサイドセールスにも効果が出ています。

「自分がパスした商談がその後どうなっているかがわかるようになりました。動いていない商談があれば声をかけられるので、より早く商談化につなげられるようになったと思います」(宮田さん)

社内ナレッジの検索も、日々の対応を変えています。

「以前はスプレッドシートから探していましたが、今は聞きたいことを入れれば出てきます。社歴が長い人なら経験で答えられることでも、2年目の自分ではすぐに出てこないことが多いので、本当に助かっています」(スミスさん)

社外向けのチャットエージェントは、運用を始めて間もない段階です。それでも、お客様の悩みや問い合わせの内容を事前に把握したうえで電話対応に臨めるようになるなど、手応えが出始めています。

こうした積み重ねは、数字にも表れています。2026年7月のSalesforce社の発表では、受注率15ポイント向上、報告書の作成時間は80%削減、商談化率5%向上という成果が紹介されました。斉藤社長は同発表の中で、受注率が2年間で15ポイント上がったのは、Agentforceの力と、全社員が毎日情報を蓄積し続けてきた積み重ねによるものだと語っています。

 

成功要因と、乗り越えた壁

プロジェクトが順調に進んだ理由について、藤田は2つの点を挙げます。

「1つは、斉藤社長ご自身の熱量が一番高く、旗振り役になっていたこと。もう1つは協力体制です。社長と現場の間に温度差があると、うまくいかないプロジェクトが多いんです。営業戦略部の皆さんが間に入って情報を吸い上げ、スミスさんは実際に手を動かして連携元データ側の製品(amptalk等)のプロンプトを作り込んでくださいました」(藤田)

一方、ジャロック側から見た当社の印象を、スミスさんはこう話します。

「僕たちはAIの窓口を担当していますが、そこまで詳しいわけではありません。その中でいろいろな提案をいただき、疑問にも正確に答えていただいているので、本当に助かっています。外部から見て『こんな使い方がある』というものがあれば、これからもどんどん教えていただきたいです」(スミスさん)

もちろん、苦労がなかったわけではありません。最も大きな壁は定着化でした。

「運用ルールを決めても、やってくれる人とそうでない人がいて、自己流になってしまう人もいます」(宮田さん)

そこで同社では、毎月の全社営業会議で、AIの使い方のコツを少なくとも1つ共有しています。「類似商談にはこう質問すると情報が出てくる」といった具体的なTipsの配信です。また、導入時に過去データの整理をもう少し進めておけば、さらにスムーズだったという振り返りもありました。

 

これから:Slackで全社員のAI活用へ

同社は今後、Slackを社内コミュニケーションの中心に据え、これまで営業中心だったAI活用を全社員に広げていく方針です。

「Slackbotで全社員がAIを活用しながら業務に取り組めるよう、スキルなども構築して、より働きやすい形にしていきたいです」(宮田さん)

スミスさんは、自然言語でエージェントを開発できるAgentforce Vibesにも関心を寄せています。宮田さんは、AIで何でも調べられる時代のインサイドセールスのあり方に目を向けています。

「待っているだけでは問い合わせは減っていきます。AIを活用して問い合わせをどう増やすか、どう対応するかを探っていきたいです」(宮田さん)

当社の藤田も、次の取り組みを見据えています。

「まず、今あるエージェントをSlack上で自然に使えるようにしたいですね。そのうえで、創業63年の中で培われた機械のメンテナンスのノウハウなどをナレッジとして活かせば、既存のお客様に向けてもAIでできることがたくさんあるはずです。どこまでやれるか、一緒に検討していきたいと思っています」(藤田)

 

メッセージ:中小企業こそ、AIを

最後に、これからAI活用を検討する企業へのメッセージを伺いました。

「私たちも約40名の小さな会社ですが、Salesforce・Agentforceを導入して働き方が変わりました。AIは大きな企業だけのものではありません。中小企業でもどんどん活用することで、AIを使える会社が生き残っていくのだと思います」(宮田さん)

「コストはかかりますが、それ以上に良さがたくさんあります。ぜひ試していただきたいです」(スミスさん)

日報を書く習慣という地道な土台の上に、AIで「使う」仕組みを重ねる。ジャロックの取り組みは、データ活用に悩む多くの企業にとってヒントになるはずです。

会社名 株式会社ジャロック
事業内容 物流システム機器・各種保管棚の製造、販売、施工
従業員数 約40名
サイトURL https://www.jaroc.com/

関連する導入事例を見る

  • 売上を10倍に。経営戦略を実現するDXを支えるシステム基盤にSalesforceを採用

    売上を10倍に。経営戦略を実現するDXを支えるシステム基盤にSalesforceを採用

    • 保険業,
    • 金融業,
  • テラ・ウェブクリエイトさんは、なんでも相談にのってくれる。その姿勢に安心感がありました。

    テラ・ウェブクリエイトさんは、なんでも相談にのってくれる。その姿勢に安心感がありました。

    • 観光業,
  • 情報の共有が断然早くなりました。スタッフ間のチームワークにも、いい影響を与えていると思います。

    情報の共有が断然早くなりました。スタッフ間のチームワークにも、いい影響を与えていると思います。

    • アパレル製品,
    • 企画・製造販売,
  • 派遣社員の情報をすべてシステム化することにより、時間短縮でき、登録者の情報を容易に取り出せるようになった。

    派遣社員の情報をすべてシステム化することにより、時間短縮でき、登録者の情報を容易に取り出せるようになった。

    • 公共機関,
    • 通信,

ビジネス規模から探す

業種から探す